漆の木♪人生ぃ~20ねん~♪
マリコ・ポーロ
漆の木は満身創痍となって その人生を終える・・
~my 椿皿 & 片身替馬上杯。日々使ってます。~
「21世紀で漆文化は確実に滅亡する。漆は美術館の中にしか残らない。」
これは、200年続いた輪島の塗師屋の当主の言葉です。先に書きましたが、私は世界最高峰の塗物といわれる輪島塗の、某会社関連で働いておりました。そこで漆に魅せられ、このなくなりつつある漆文化をどうにかして残せないものかと、皆で試行錯誤しておりました。でも、これはほぼ無理かなとも思いました。
だいたいからして、‘漆’とは何ぞや。
‘漆’とは‘漆’という木の樹液です。ゴムの木のように、木肌を傷つけられると、その部分を自ら養生するために樹液を出します。これが‘漆’です。
カブレを気にしなければ誰でも漆の木を切れば‘漆’が採れるのか、といえば、それは無理です。そこに「職人」が存在しないと‘漆’は採れません。「掻子かきこ」という漆掻きの職人さん達が、6月から9月位まで、漆の森にはいって、一滴ずつ一滴ずつ採取していきます。「名人」とよばれる人は、よりたくさん採取します。
タイトルに♪人生20年~と書きましたが、樹齢15年~20年位の木が良い頃合いだそうです。地肌の一箇所にキズをつけ‘漆’を掻くと、その木は4-5日置かないと、もう樹液を出してくれません。つまり4-5日に一回づつ、一本の木から‘漆’を頂戴するのです。
20年かかって育てた漆の木を、こうやって夏の間ていねいに掻いてゆき、一本の木から採れる‘漆’の液はどの位の量だと思いますか?
180 ~ 200cc ですよ。 なんとカップ一杯! です。
しかも漆の木は野生ではほぼ存在しません。よく山へ行って、漆にカブレたとか聞きますが、これはウルシ科のハゼとかヌルデとかが多いそうです。漆の木は人を恋しがる」といわれるほど、とても人の手がかかります。切られるために、大事に大事に人の手で育てられるのです。
今、日本で採れる漆は、0.001% とも言われています。ほとんど岩手県浄法寺です。瀬戸内寂聴さんが住職だった天台寺があるところですね。もちろん輪島でも、浄法寺に植林をしています。
浄法寺町のある漆掻きの青年は、名人のおじいちゃんに憧れて掻子になりました。この青年がおじいちゃんの年齢になるまで、漆文化は残るのでしょうか。我らは、どうやったらこの文化が残るかを考えなければ。これは漆に限ったことではないですけどね。
漆の木は体中の樹液を出しきり、満身創痍となってその一生を終えます。しかし、その樹液は、漆器となって、また木に戻ります。塗り師の職人さんが言うには、それはまるで、自らの意思で木に吸い込まれていくよう、だと。
ちょっと感傷的になりすぎた。木の魂こもりすぎ?漆器使うのこわくなった?そんなことないよね。ステキでしょう。漆って。
もちろん、採取したままの樹液をそのまま塗るわけではありませんよ。器物に塗れる状態にするまで、また大変なのよ、これが。次回は、その漆が吸い込まれていく‘木’の職人さん「木地師」話にしようかな。それとも、漆器の実用的な話にしようか。
ほな。
コメント欄をもうけさせていただきました。公開はいたしませぬので、ご感想なりいただければ嬉しいです。
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