漆の上塗りは水をかぶって裸で!
マリコ・ポーロ
~椿皿。超お気に入り。~
昔の上塗師は、上塗蔵へ入る時、裸になって水をかぶり、フンドシいっちょう(失礼💦 )で仕事をしたそうだ。
この皿は、朱塗といわれるが、フチが黒いの見えますか?(ボケててすみもはん)何故こうなるかというと、中塗りに黒漆、上塗りに朱を使っているから。
また、黒塗は、中塗りに黒漆、上塗りには限りなく透明に近い漆を薄く何層も重ねて塗る。つまり、私達が見ている‘黒’は、透明な上塗漆を通した、中の‘黒’なのである。これが、漆黒。引き込まれるような深~い黒。宇宙の黒。
こういう塗りは、今、ほとんどなされていない。こちらの工房の塗りは、全て、中世の本来のそのやり方を継承している。
上塗は、微塵のチリの付着も許されない。プチッて表面に現れちゃうのだ。そうしたら取り返しがつかない。長~い工程をやり直しである。だから、裸で水をかぶってから上塗蔵へ入る。
今でも、大物を塗るときは、裸でシャワーキャップをかぶって仕事をする。(ズボンは履いていたが、私達が見てない時は脱いでるかも・・。)それでも、空気中に漂っているチリなんかが付いてしまった時は、漆が固まる前に、鳥の羽の先で、ピッピッと弾いてゆく。
上塗とは、繊細にして、ガテンな仕事だ。
だからかどうか、上塗師は皆、白魚のような綺麗な指です。
私がご縁があった某会社は、日本で唯一、全ての製品に国産の漆を使用している。浄法寺漆だ。しかも、上塗りにだけではない。中塗りにもだ。これは、途方もないことで、だから植林もしているし、当然に価格も高い。
国産漆は、海外産と比べるとツヤと深みがぜんぜん違う。
な~んて言ってはいるが、私なんか、ひとつホイと出され「どっちだ?」と聞かれても分からない。両者並べてみてなんとなく分かる程度なのさ。器物への密着度も断然良いそうだ。だから耐久性があり長持ちする。
某会社には、創業当時の文化文政時代の上塗蔵を復元したものがあるが、普段の仕事は工房の上塗部屋でやる。それでも、上塗部屋って、塗った漆を乾かす(本当は、乾かすのではなく、固めるのだが)、引き戸の木の回転風呂などがあり情緒がある。
上塗部屋は、上塗師以外は立ち入り禁止だぞ!
上塗の刷毛は、昔は女性の髪の毛を使ったそうだ。でも、今、ヘアカラーもパーマもしたことない髪の人はあまりいないので、なかなか手にはいらない。ある上塗師のお嬢さんは、お父さんのために、髪をずっと伸ばしていた。伝統工芸とは、そういうワールドなのだよ。
🐎 下塗り
~下塗り用の漆は美濃紙で濾す(撮った写真の、写真を撮った)。~
漆器の基礎をかためる下塗りも熟練の職人さんの仕事で、大事な作業。塗って→砥いで を何度も繰り返す。これで堅牢な漆器が生まれる。
漆職人に限らず、職人さんは自分の使う道具は自分でつくりますよね。昔の職人さんの修行は、自分の道具づくりから始める。
それこそ「仕事は、わての背中を見て覚えろ」の時代だったから、意地悪な親方や先輩は、自分の道具は弟子に見せない。でも、良い親方や先輩は、仕事が終わるとワザと道具を置き忘れてゆく。残った弟子は、それをコッソリ見て「な~る」と勉強したそうだ。
自分でも作るが、やはりそこには、道具づくりの名人がいる。上塗刷毛では、名人泉さん。またフローになるが…
伝統工芸品を使う人がいなくなると
↓
伝統工芸品を作る人がいなくなる
↓
その道具を作る人もいなくなる
これは、材料にも同じことが言える。材料は、自然環境も影響するからとどめることが出来ない。嗚呼。どうしたらいいんだろう、と、仲間達といつも話している。
これを皆にも知ってほしくて、僭越ながら蟻の爪ほどの(蟻って爪あるか?)力ではあるが、こうして発信している次第。
次は、呂色。「呂色ってなに???」でございましょ。
こんなこと読んでるだけでは分かりませんよね。作業工程の写真は持っているのですが、許可をとらないと使えないですしね。いずれ許可をとって、もっと詳しくお伝えしたいとも思っておりまする。
それよりも、興味のある方は、是非現地へ行って実際に見てください。私が、あーだらこーだら書いているのを読むより、それが一番。
ほな。
コメント欄をもうけさせていただきました。公開はいたしませぬので、ご感想なりいただければ嬉しいです。
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