北条氏照と弁天小僧の、江の島
知らざぁ言って聞かせやしょ~
「浜の真砂」と五右衛門がぁ、歌に残せし盗っ人のぉ
種はつきねぇ、七里ヶ浜ぁ
~絵葉書「藤沢弁天小僧菊之助」、広重・国周~
音羽屋ぁっ !
ご存知!白波五人男。そう、歌舞伎「弁天娘女男白波 べんてんむすめめおのしらなみ」です。
天下の大泥棒の一味として、揺すりタカリ人殺しの悪行三昧。弁天小僧はその容色を武器に、女に化けての美人局(ツツモタセ)。男とバレタあとの、痛快至極な名口上には、この江の島の名所旧跡の名称が散りばめられている。
以前を言やぁ江の島の~、岩本院の稚児あがり、普段着慣れし振り袖から、髷も島田に由比ヶ浜(結いがはま)…
弁天小僧と南郷力丸の美人局コンビ。まんまと金をせしめた帰り道、花道で分け前のやり取りをする。ちゃっかりしている賢い弁天小僧に誤魔化されちゃう力丸のセリフ、「俺とおめえの仲じゃあねえかい」。現代だって、粋なオオムコウからは声がかかる。
よっ!ご両人っ!
江戸時代BL(衆道)ファンタジー(そうなのか?)。歌舞伎ワールドだぁねえ。
弁天小僧役は、尾上菊五郎さん(寺嶋しのぶさんの父上)がもう少しお若い頃が絶対的に好きです。
息子さんの菊之助さんは若いし綺麗だけど、弁天小僧が男とバレて開き直った後の、あの赤い長襦袢をバサバサさせながら、あ~あと伸びをしたり、もろ肌脱いで煙管(きせる)をぐるんぐるん回しながらタンカをきるところの迫力や、額に血を滲ませながらクワッと睨むところの壮絶な色気はまだまだ…なんつって、どこのツウぶったご隠居だあね。
江島神社には、菊五郎さん親子の手形などもありますよ。
そういえば!私の好きな歌舞伎の演目で、もうひとつ江の島が舞台なのがあるのを思い出した!
「桜姫東文章」。冒頭が、鎌倉建長寺の若き修行僧と、稚児・白菊が、江の島の稚児ヶ淵の断崖から入水心中するところでした!でも、僧は生き残ってしまい、輪廻転生、十数年後、白菊の生まれ変わり「桜姫」と再会して、どろどろの愛憎劇、あんなことやこんなことがおきる、という三角関係ファンタジー(そうなのか?)。
これは、江の島稚児ヶ淵の名前の由来となった実話というか伝説でござんすわいなあ。
こちらは、坂東玉三郎さんと片岡仁左衛門さま(前・片岡孝夫さま)以外の配役は、わっちは考えられないのでありんす。孝夫さんは僧役ではなくて、権助(実は僧の弟だった!)役。このお二人が演ると、ドロドロに見えないのが芝居の主旨としていいのか悪いのか。
最近は、どなたがハマリ役なのでしょう。お金も時間もなく、歌舞伎はとんと見にいってまへん。
~江島神社の八臂弁財天(背後霊みたいに映っている方)と、日本三大弁財天のひとつ妙音弁財天(セクシーな方)。本物は撮影禁止なので巨大ポスターを。~ 江の島とは
千四百年前から続く信仰の島。現代でこそ関東のビーチ遊びのメッカで、日帰りスパまでありますが、源頼朝や前北条、古河公方や後北条、徳川など関東の武門の庇護をうけ、精神的・軍事的・政略的にも大事な場所でした。
戦国末期は、わが殿・北条氏照どのの管轄です。背後に玉縄城を置き、境川という大きな川が流れこみ、海を右へ行けば小田原、左へ行けば江戸湾という後北条の重要ポイントを舟で結べます。
外海に向かって断崖がそびえ立ち、多数の入江が入り組み、後北条に興味がでるまではただの日帰りの遊び場所だった所が、今の目で見るとまるで秘密軍事基地のようです。
島に祀られるのは、前&後北条家が信仰した「弁財天」。弁財天は龍神信仰でもあります。北条の三つ鱗は龍の鱗。島中、あっちを向いてもこっちを向いても至る所に三つ鱗のマークだらけです。
弁天小僧も江の島も、素晴らしく詳しく書かれているものがたくさんあるので今更ここに書きませんが、ちょっとだけ書きました。
江の島?江ノ島?
私も知らなかったが、島に書いてありました。どうやら、現代は・・・
▲「江ノ島」
電車屋さんとかバス屋さん、つまり交通機関が使う。ただし、史跡・名勝としての標示は、こちらを使う。登録の時こちらを使ったからなんですて。
▲「江の島」
住居標示など、交通機関以外が使う。
の、ようです。
大昔は、「江島」とか「江之嶋」「江嶋」とかいろいろな書き方で文書などにありますね。 お食事
あまたあれど、おすすめは「魚見亭」。かなり先端に近い方です。一番眺めがよく(私が思うに)、席もゆったり。昭和の江の島風で好き。今なら、魚見亭でなくとも、とにかく生シラスですよ!朝一番で行ってね。
仙人が降って島の若衆に伝えた祭囃子に由来したものだそうです。年に一度、江の島八坂神社の男神は天王囃子で島内を練り歩き、対岸の小動神社の女神のもとに通うんですって。
よっ!ご両人っ
島の上までエスカーで、各お宮をお参りしながら行けます。帰りはブラブラ歩いて下ればよい。
エスカーですか?エスカレーターですよ。どんなエスカレーターか?すごいアイデアとネーミングです。知らないで行ったほうが驚きが新鮮・・・?
または、橋から一気に乗合船で奥の院岩屋まで行って、ブラブラ歩いて戻るのもおすすめ。
そう。この岩屋が、またねえ、なんというかねえ。ある意味たまげる。私が子供の頃は、陸からは行けなかったり(船で海からまわる)、浸食がひどく長い間閉鎖されたりしてた。
今、ここには、富士山から続いている風穴がっ!?その風も体験できるぞ??龍もおるし???
まあ、行ってみてくだされ。なんも言えん。 白波五人男ならぬ、北條五人男
これを書いていて、フト妄想した。氏照どの兄弟で歌舞伎「白波五人男」をやったら、と。湘南ボーイ北条一族にぴったりの演目でしょう。
以下、ついに捕り方に追われ稲瀬川に勢ぞろいの図から。花道を順番に歩いてきて(追われているのに、悠々と)、正面舞台に後ろ向き一列に並び、一斉に振り向くところがカッコイイのよねえ。
そして、一人づつの口上が始まる。そんな事してる場合か?まあ、そこが歌舞伎ワールド。
ぜ~んぜん情景が浮かばないって方は、ネット検索して見てくだされ。You Tube でも、見られると思いますよ。
北条氏政
「問われて名乗るもおこがましいがぁ~ 関八州に隠れもねえ、北条一族たぁ 俺達がことよぉ~・・・違う、六十余州に隠れもねえ」の、日本駄右衛門(にっぽんだえもん)
まったく性格は違うけど、長男だしボスだから
上杉景虎
「名せえゆかりのぉ~」の、弁天小僧菊之助(べんてんこぞうきくのすけ)
やっぱりねえ、景虎さんよねえ。上杉謙信公へも美人局 つつもたせ?
「やいやいやいっ!オレの女(弟)に何しやがるんでい。越後くれたら許しちゃる」って兄上達が乗り込んでいくはずだったのにねえ。
北条氏邦
「続いて次に控えし(ひけえし)はぁ~ ガキの折から手癖が悪く、 後を絶たれた藤田家のぉ、御名前騙りの・・・違う違う、意味違うから。後を隠せし判官のぉ 御なめぇ騙り(おなめぇかたり)のぉ」の、忠信利平(ただのぶりへい)
北条氏規
「またその次につらなるはぁ~ 以前は今川の人質のぉ・・・違う、以前は武家の中小姓ぉ 今牛若との名も高く~ 忍ぶ姿も人の目にぃ~」の、赤星十三郎(あかぼしじゅうざぶろう)
さてドンジリに控えし(ひけぇし)は、我らが殿、北条氏照どの
待ってましたーーっ!
だいとーりょーっ
「潮風荒きこゆるぎのぉ(湘南の海)~ 背負って(しょって)立たれぬ罪科(つみとが)は、その身に重き虎ヶ石(曽我兄弟の恋人、虎女とらめ縁の石?供養塔?みたいなの)、どうで終い(しめぇ)は木の空とぉ~ 覚悟はかねて鴫立沢(湘南は大磯の名勝)」の、南郷力丸(なんごうりきまる)
上のセリフは、凝り性のマリコ・ポーロもさすがに覚えてないゆえ、本で確認しながら書きました。言い回しは私の記憶なので、違っているところがあるかも。
いずれ劣らぬ伊達男。華やかで、小気味のよい江戸歌舞伎です。お芝居の最後は、立ち回りの末みんな捕まったり自害したりしちゃったりして、つまり、落城。
なんですか、まったく違う方向にいってしまいましたのう。江の島はたまに行くので、いずれまた腐ってない見聞録を。
チョ~ンッ!←柝の音(きのね) マリコ・ポーロの歴史ブログ仲間で関西在住の sayuri さんが、偶然!ちょうど同時期に琵琶湖「竹生島」を見聞してます。
日本三大弁才天は、江の島と竹生島と宮島。私も竹生島は2回お参り上陸したことがあります。江の島は非常にベタな観光地で、ともすると「お参り」の雰囲気が薄れてしまうのですが、竹生島は、湖のせいもあるのか、「信仰の島」という気配が漂う神秘的な島です。sayuri さんの美しい写真をご覧あれ。こちらは、落語でっせ。(sayuriさんご了承)
ぼっちらぼっちらと
「我は湖の子、さすらいの~竹生島」
http://d.hatena.ne.jp/staygreeen/20100727/1280239074 コメント欄をもうけさせていただきました。公開はいたしませぬので、ご感想なりいただければ嬉しいです。画像は全てマリコ・ポーロが撮影したものです。画像と記事の持ち出しは平にご容赦願います。
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