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2013年2月 1日 (金)

「真剣」 新陰流を創った男 by 海道龍一朗

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~新潮社文庫表紙より~


それがし(←マリコ・ポーロ)、上泉信綱という御仁に惚れもうした。

またまた、海道龍一朗氏の小説のご紹介でござる。

「真剣 新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱」

おっもしろいですねえ!!
どんどん読み進み気がついたら夜中の3時。あまりに先が読みた過ぎて高速スピードで斜め読み状態。こりゃイカンわ、もったいない。丁寧に読み直さなきゃです。


「齢(よわい)五十半ばを超えた兵法者は、眉目秀麗の壮年で・・・」

なに、それ。
メチャメチャ好みです


まず、もう、冒頭の北畠具教との立合い場面からいいです。具教殿が花も実もある殿様に描かれていますねえ。

そこから場面は一気に、14歳の源五郎どの(信綱)の「鹿島立ち」に戻るのですが、この鹿島での松本備前守の下での修行時代が、これまたいいです。鹿島の「立切試合」で、日を追うごとにピュリファイされていく気持ちの動きの描き方も凄い。涙が出てくる~。


「真の剣よ、この二本の太刀に宿れ」

タイトルの「真剣」とは、真(まこと)の剣という意味だったのですね。


我らが北条の綱成に乞われて、玉縄の城で新陰流の演武を披露する上泉信綱殿。綱成&氏康がまた、お兄ちゃんと弟君みたいでカワユイ。

海道氏はこの二人はこういう関係にしたいみたいな気がしますが、これがまた、河越の戦にたっぷりからめられているところが、後北条ファンにはたまりませんな。


武田信玄殿の、懐の深い はからい もいいですねえ。「信綱」の「信」は、信玄からいただいたのですって?これホント?まったくもって知りませんでした。


謙信、長野、関東管領上杉などなどなどのそうそうたる武将達と、享徳の乱から始まる関東・東海の争乱の戦が小説の中に完全体で間配られています。しかも、史実重視

私が読んでいる新潮文庫版は、冒頭に上州周辺の勢力図が付いていて、これが助かる。何度も見ちゃいます。


上泉信綱は兵法者でもありますが、大胡城の城主でもあるのですね。これも全然知りませんでしたよ。

って、なんにも知らなかったのですがね。恥ずかしながら、「新陰流」とは柳生の分派で、この小説は江戸時代の剣豪小説かと思って読み始めて、ドびっくり~。目からミツウロコ(三鱗)です!






上泉殿は戦の合間にも、名だたる兵法者達との邂逅を重ねてゆきます。

鹿島神道流の松本備前守、陰流の愛洲移香斎、柳生新陰流の石舟斎宗厳、槍の宝蔵院流・胤榮・・・などなどなど。


この小説の何が凄いって、上泉殿とそれぞれの兵法者たちとの出会いと勝負だけではなく、流派の奥義だけでもなく、それぞれの兵法者達が自らの兵法に開眼して流派を完成してゆくまでの懊悩や葛藤(出ました、大好きな葛藤)までをも描いていることです。

何度も言っちゃいますが、これが本当に凄い・・・!

剣の心得がある方達でしたら、もっともっと面白いのでしょう。私はほとんど意味が分からず、それでも引き込まれてしまうのですよ。ワクワク、ゾクゾクするのです。硬派なだけではなくエンタテイメント要素もたっぷりです。


それから、これも意表をつかれました。胤栄や宗厳ら、関西の剣豪達が関西弁なんですよ。

考えてみればそうですよね。

私はよくブログにも書きます。幕末物は江戸弁を含めそれぞれのお国言葉で描かれることが多いが、なんで戦国時代は魔王とおサル以外は標準語なのでゃぁも?って。

自分でそう書いているくせに、胤栄や宗厳が関西弁だと「おっ!?」と思い、不思議と剣豪達の性格まで今までと違って思え、よく分からないけど分からないなりに、剣の太刀筋も違うように思えてしまいます。

これは、千葉ちゃんには合わへんなぁ。夏八木さんや亡き藤田まことさんあたりやったら合うかもしれへんなぁ。

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私は常々、戦国という時代に「剣の道を極める」ということがとても不思議でした。

生きるか死ぬかの時代、剣というのは人を倒し自分を守るためのものであって、それが自らの内への精進へと浄化するところへ向かえるものだろうかと思っていました。


なんとなんと海道氏は、「真剣」で、武将と兵法者の狭間で悩む上泉信綱の姿を書いてらっしゃいました。

そこが、ソレガシのこの小説での一番のツボでした。(けっして、上泉殿のビジュアルではにゃい・・・)


それと、今ちょうどNHK総合で「塚原卜伝」をやっていますが、廻国修行にしても弟子入りにしても、その辺中が敵国だし、いつそこが戦場となり、いつその人が敵になるかも分からない時代です。どうやって、あちこち出向き技を披露し、「戦」ではない「試合」をするのだろうと思っていました。

この小説には、ちゃ~んと、そのへんのところも触れてありました。丁寧に書かれているなあと思いました。


いや~、「燃えよ剣」での司馬さんが書くところの土方歳三以来、惚れてしましたよ。海道さんの上泉信綱。

寡黙で、静かで、強くて、硬いかと思えば自然体でしなやかで、そして素直で、そうそうたる戦国武将達や名立たる剣豪達の前で、はにかんじゃうところなんていいんですよ~。


ついに大胡城奪還の時はきて・・・、そして「真剣」の死合が・・・
まあ、あんまり書いてもなんですし、ソレガシの拙い感想文ではうまく伝えることができ申さぬゆえ、是非お読みになってくだされませ。

夜中に読んでて、いきなり素振りしたくなりますぞ。


しからば、これにて。


時代劇、跳んだ!「塚原卜伝」
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「長い通勤時間は本を読む」
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ドラマ 「真田太平記」と、小説「利休にたずねよ」
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「後北条龍虎伝」by海道龍一朗氏
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「早雲立志伝」by海道龍一朗氏
http://maricopolo.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-1371.html


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画像は全てマリコ・ポーロが撮影したものです。

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